ダメな話

「俺の友人のAには霊感があって、しばしば夢で金縛りにあうらしんだけど・・・ *1


彼とは初対面なのだが、私の目をじっと見てゆっくりと話し始めた。
「Aが言うには、この前の金縛りは最高に強烈だったらしい」
「ほうほう」
「寝入りばなのいつもの金縛りに会う前特有の意識のだるさがあったらしい。 それでAは“そろそろくる”と、もう身構えてたらしい」
「ふんふん」
「で、案の定、金縛りがきたらしいんだけど、ちょっといつもと縛りの感じが違うらしい」
「ふんふん」
「いつもの金縛りならピクリとも身動きできないんだけれど、今度のは縛られているんだけれども、ちょっと弾力性があるものに縛られている感じらしい」
「ほうほう」
「でもゴムのようには伸びないし、ぶちぶちと切れるような感じでもない、ちょっとぷるんという感じらしい」
「ほうほう」
「それはそれでとても気持ち悪くて、Aは声をあげようとしたんだけれど、やはり声は出せない」
「ふんふん」
「すると、どこからか彼の意識の奥に語りかける声が聞こえてきたらしい」
「ふんふん」
「お、お、お、お鍋にはマロニー・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」






「ねえ、もう別のところ行こうよ」 振り返るとつまらなさそうに彼女が立っていた。
「私、本当はシロクマが見たいのよ」 と彼女。
僕は口をもぐもぐさせているフタコブラクダに “おもしろい話をありがとう。じゃあ、また” と言ってその場を離れた。