萌え粉砕


はい、今日のバイト君集まってー。
これから作業内容を説明します。
今日の作業は、電気部品の検品です。
作業はいたって簡単。
各自の作業台横の箱から検査する部品を取り出して、作業台の上に乗せます。
そのとき作業台の上の赤い部分と部品の赤い部分を重ねます。
すると、前のランプが緑に光れば正常なのでそのままラインに乗せて流します。
ランプが赤く光ればそれは不良品なので、実験台の下の不良品と書かれた赤い箱に入れます。
不良品がたまれば粉砕工場へ送りますので近くの社員に申し出てください。
ただ、それだけです。
何か分からない事があれば、自分で判断しないで、すぐに近くの作業員に聞く事。
それでは、各自作業を始めてください。10時になると10分間休憩を入れます。
以上。


・・・やれやれ。
ぼくは言われたようにこのかったるい作業を始めた。
時給は安いけれど、昼飯付でこの単純作業なら文句も言えない。
がちゃん、がちゃんと作業を続け、緑のランプを僕はながめる。
おっと、赤のランプだ。おまえは不良品。
そしてその部品を足元の箱へ放り込む。
がちゃん、がちゃん、作業は続く。
そもそもこれは何の部品だ? 箱には見たこともない文字が躍っている。作業が単純だとつい余計な事を考えてしまう。
おっと、赤のランプで、おまえも不良品。
しばらく単調な作業が続く中、足元から何やらくぐもった音がする。
「・・・¥@*+・・・」
んー何の音だ、と足元を見ると箱の中の不良品の一つがぼくに何かをうったえかけているようだ。
「・・・ココハ ダメダ・・・」
何がだめなんだ、とぼくが言うと
「・・・ココハ ダメ・・・ナガレテイカネバ・・・」
流れるって、ラインのことか?
「・・・ナガレテ リッパナキカイニナラネバ クニノオッカサンニ モウシワケナイ・・・」
なんだおまえ、妙に演歌っぽい話だな。
「・・・コノママデハ ハルバル ニホンニキタ イミガナイ・・・」
いや、おまえがどこから来たかは知らんが、おまえは不良品だからしかたがないぞ。
「・・・オマエ アルバイトノブンザイデ・・・」
なんだおまえムカツクやつだな。はるばる日本に来た意味って何だよ。
「・・・トリアエズ アキバニイク・・・」
アキバって秋葉原か?
「・・・イエス・・・」
電家製品でも買って、おっかさんとやらに持って帰ってやるのかい?
「・・・チガウ・・・モエダ、モ、エ・・・」
もえ?萌え?
「・・・トリアエズ メイドキッサ、ニイク・・・」
はあ? 
ぼくは軽いめまいと怒りを感じ、近くの社員さんを呼んだ。
すいませ〜ん、不良品がたまりましたので、こいつらを粉砕工場へ送ってくださ〜い。