未来の発明家


娘が台所のテーブルで夏休みの宿題をしている。
「今年はまじめにやってるなあ」と私が声をかけると、「今年はめんどくさいことはさっさと終わらせて心置きなく遊びまくるつもり」と平然として答える。
「で、今はなにやってんの?」
「作文。 将来なりたい職業についてだって。 まったく、ださいタイトルの作文よね」
まあ確かに古風な題目ではある。
「ふーん、で何になりたいのおまえは」
「生涯、フリーターで突き進む!っていう笑いを取るパターンも考えたんだけど、うちの担任では理解が得られそうにないと思ったので趣旨を変更しました」
ニートはだめだよ、ニートは」
「だから変更。 発明家にしました。 夢があっていいでしょう」
「発明家ねえ」
「そう発明家。 地球環境問題の改善に取り組む発明家なの」
「たとえばどういう?」
「当然、CO2対策よね。 石油資源はどんどんなくなっていくのにガソリン車が走りつづけるのも無理があるわ。 かといって飢えている子供達がいるというのにトウモロコシから燃料用のアルコールを作るのはどうも納得できないの」
「そうだよな。 飲料用のバーボンぐらいにしとかないとなあ」と私が口をはさむと冷ややかな目でにらまれた。
「だから水で走る車を開発する事にします。 CO2もでないクリーンなエンジンです」
「おー、そりゃ夢があっていいなあ。 他には?」
「他には、そうねえ、リサイクル問題かしら。 資源の再利用ね」
「ふんふん」
「たとえば使用済みのダンボールを再利用して、肉まんの具にするとかね」
こらこら、ニッコリして言うな。