★最近読んだ本

春になったら莓を摘みに (新潮文庫)

春になったら莓を摘みに (新潮文庫)

この前読んだぐるりのこと (新潮文庫)はかなり骨太な(私にしてはという意)随筆であり、いろいろと考えさされる事の多い本であった。 本著はそれよりも前の著者初エッセイで、著者が学生時代すごした英国での下宿先のウェスト夫人とのかかわりあいが描かれる。
本書のタイトルでもある最近のウェスト夫人の手紙の文章の内容が、なんとなく私の胸にせまるものを感じさせる。

親愛なるK・・
 ああ、こういうことがすべてうまく収まって、また一緒に庭でお茶が飲めたらどんなにいいでしょう。(中略)   春になったら、苺を摘みに。それから水仙やブルーベルが咲き乱れる、あの川べりに。きっとまた、カモの雛たちが走り回っているわ。私たちはまたパンくずを持って親になった去年の雛たちの子供たちにあげるのよ。私たちはそういうことを毎年続けてきたのです。毎年続けていくのです…。

今まではあたり前のように毎年繰り返されてきたことが、この先、あたり前ではなくなる可能性が危惧されている昨今の状況を、楽観主義者であった私もさすがに最近は「ちょっと待て!…」 というスタンスになりつつあります。 まあこのことは本書の内容とは何の関係もないところなんですがね。