星へ帰る星


クリスマスに叔父さんからプレゼントが届いた。
叔父さんは船医で、残念ながら毎年この時期には航海中だ。 でも遠い国から忘れずにプレゼントを贈ってくれる。
見たこともない切手が貼られたその箱は、小さいけれど少し重い。ワクワクしながらゆっくりと開ける。
中には、星の形をした薄く透明なブルーの石が、異国の文字で書かれた新聞紙に包まれていた。 
そして叔父さんの手紙が1通。
『メリークリスマス。 これは先日航海中、デッキに舞い落ちてきた星の子供です』
「ほんとかなあ・・・」 そうつぶやいて、手にとってみる。 軽くもなく重くもなく、しっくりと手のひらになじむ感触。


よくよく観察するとそれは不思議な石だった。
石に直接耳をつけると、外国のラジオ放送のように聞きなれない言葉としっとりした音楽が聞こえる。
ポケットに入れておくと、ほんのりと暖かくカイロのようだ。
夕方、犬のグレンの散歩に行く時は、上着のポケットの中でちかちか光るのでライトがわりにもなる。
普段は青い石だけど、手のひらにのせしばらくするとその時の気分で石の色が変わった。
楽しい気分の時はオレンジ色、優しい気持ちの時は緑色、悲しい時やくやしい気持ちの時は赤色…


すでに日の落ちた夕方、散歩の途中で野良猫を見つけたグレンが急に走り出した。 その勢いでボクのジャンバーのポケットから星の石が滑り落ちた。
あっ・・・
スローモーションで星の子供は歩道に落ちて、そしてはじけた。
星の子供はさらに小さな子供達へ分裂していく。
赤や青や緑の小さな光の粒がゆっくりとブラウン運動をしながら、長い光の尾を残して夜へ吸い込まれていく。
ボクはその1粒の光だけをかろうじて左手の中につかまえた。
左手が脈打つようにぼんやりと青く点滅する。
ゆっくりと左手をひらくと、点滅する光の粒は、“さあどうしようかなあ?”という感じで少しもそもそっと揺れたかと思うと、青い光の筋となってやはりゆっくりと空に消えていった。


星の子供はまたどこかの星に帰っていったのだ。


またね・・・
ボクとグレンは彼らの帰還をじっと見送った。