ブレーメンの音楽隊


年老いたロバが長年住みなれた家を追い出されてしまいました。
「老いて役立たずはお払い箱か… それではブレーメンに行って音楽師とでもなることにしよう」
ロバはとぼとぼと西のブレーメンを目指します。
途中、悲しげに鳴く犬と出会いました。
犬が言うには「飼い主は血統書つきのチワワを買ったので、雑種のおいらはもう要らないって…」
「それじゃあ、私と一緒にブレーメンに行って音楽師にならないかい」とロバは犬を誘いました。
「おもしろそうだから、お供しましょう」
二人は即興の歌を口ずさみながら進みました。
ブレ〜メン、ブレ〜メン、ブレ〜メンに行って素敵な音楽を〜、ラララ〜♪
途中、悲しげに鳴く猫と出会いました。
猫が言うには「ネズミも取れなくなった老いぼれ猫は要らないって、たった今捨てられたばかりなの」
「それじゃあ、我々と一緒にブレーメンに行って音楽師にならないかい」とロバと犬は猫を誘いました。
「それじゃあ、私もお供しましょう」
ブレ〜メン、ブレ〜メン、ブレ〜メンに行って素敵な音楽を〜、ラララ〜♪
途中、門柱の上で鳴くニワトリと出会いました。
ニワトリが言うには「私の飼い主は、もうすぐ来るお客さんのために私をローストチキンにするって。悲しいので私は最後の雄叫びをあげているのです」
「それじゃあ、我々と一緒にブレーメンに行って音楽師にならないかい」とロバと犬と猫はニワトリを誘いました。
「そうね、今のうちに逃げちゃいましょう」
そして、ロバと犬とネコとニワトリの小さな音楽隊は即興の歌を口ずさみながら進みました。
ブレ〜メン、ブレ〜メン、ブレ〜メンに行って素敵な音楽を〜、ラララ〜♪
それでもブレーメンの都ははまだまだ先です。
あたりはすっかり暗くなりました。
「今日はこの辺で野宿だなあ」とロバが言うと、「向こうに灯かりが見えます」と犬が先を示しました。
「とりあえずあの灯かりまで行ってみましょう」とネコ。
そして一行が灯かりの家にたどり着き、ニワトリがひょいと飛んで窓から中をのぞきました。
家の中ではドロボウたちが盗んだ宝ものの品定めをしており、その横にはたくさんのごちそうが並んでいました。
「どうだい中の様子は」ロバがニワトリにたずねました。
「悪そうなドロボウとたくさんのごちそうが見えます」とニワトリが答えました。
ごちそうという言葉に犬はたまらず「そのドロボウたちをやっつけちゃおう。僕たち4匹が力をあわせれば大丈夫さ」と言いました。
みんな何となく気が大きくなっているので「そうしよう、そうしよう」と一致団結しました。
そして窓の外の壁にロバが前足をかけ、犬がその肩に乗りました。
さらに猫が犬の肩の上に乗り、最後に猫の頭の上にニワトリが飛び乗りました。
「みんな準備はいいかい、せーので、いっせいに叫ぶんだよ」
ロバの合図で、4匹がいっせいに家の中に向かって大声をあげました。
「#★●◎§£〒→←↑〓§≠@◎◇℃≪∽‡♯εμ !!!!」
その大声に窓の外をみたドロボウの子分が腰を抜かしました。
「親分、おばけです。背の高いおばけです」
そこへ親分登場です。
「うわーっ、み、み、みんな、にげろ〜」
………っと叫ぶような軟弱な親分ではなかったのでした。
「なんだ、うっせーなあ」と家の中から窓を蹴破り、そのはずみで、4匹はどすんどすんと地面に倒れました。
「なんだおめーらは」と親分が4匹にドスをきかせた声で罵倒しました。
「…いえ、あの、わたしたちはほんの通りすがりの音楽師になろうとブレーメンへ向かう旅の仲間です…」とロバがか細い声で答えました。
「そうかいブレーメンかい。ちょうどこの強盗団も今日を最後に解散して、ブレーメンに行って音楽をやろうと思ってたんだが… 最後の姿をみられたんじゃあ仕方ない… おい、やっちまいな」
「ヒ〜ン」、「キャイ〜ン」、「ミャ〜ン」、「コケ〜ッ」
あわれ4匹はあっという間に盗賊団に囲まれて、跡形もなく処分されてしまいました。
「野郎ども、今日でこの盗賊団は解散、これからは明るく楽しい音楽師になるぞ! それじゃあ、日が明ける前にブレーメンを目指すぞ!」
そして、荒くれ者の音楽隊は即興の歌を口ずさみながら進みました。
ブレ〜メン、ブレ〜メン、ブレ〜メンに行って素敵な音楽を〜、ラララ〜♪
ブレ〜メン、ブレ〜メン、ブレ〜メンに行って素敵な音楽を〜、ラララ〜♪
ブレ〜メン、ブレ〜メン、ブレ〜メンに行って素敵な音楽を〜、ラララ〜♪