走馬灯しゃっくり


しゃっくりを100回したら死ぬと言われているが、もう80回くらい続いている。
「ひっく!」
不思議なことにしゃっくりをするたびに昔のことを思い出し、だんだんと軽やかな気分になっていく。

「ひっく!」
辛かった会社のことから、
「ひっく!」
あの人と初めて出逢った日のこと、
「ひっく!」
大学に二浪してようやく合格した日のことや、
「ひっく!」
高校で遅くまで部活して、いつも帰りに皆でたこ焼きを食ったことや、
「ひっく!」
憧れの人にラブレターもらって舞い上がった日のことや、
「ひっく!」
中学の陸上競技会で全国優勝して翌日の新聞に載ったことや、
「ひっく!」
試験の成績が悪くて、親父にボロカスに怒られた日のことや、
「ひっく!」
小学校の音楽会で華々しくソロ・パートを演奏した日のことや、
「ひっく!」
小学校の入学式の時、桜の花が満開に咲きみだれていたことや、
「ひっく!」
幼稚園の「あかずきんちゃん」の劇でオオカミ役の台詞を忘れて固まってしまったことや、
「ひっく!」
近所の砂場で、お隣の健太と砂の掛け合いの大ゲンカをした日のことや、
「ひっく!」
ベビーカーに乗せられて、公園の鹿さんを見に行ってべろりと舐められて大泣きした日のことや、
「ひっく!」
親父とおふくろが嬉しそうにじっと顔を見つめていてくれていた日のことや、
「ひっく!」
何やら明るい世界に飛び出した日のことや、
「ひっく!」
「ひっく!」
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「ああいうのが大往生というのかなあ」
「なんだか昔のことを色々と思い出しているような感じでしたね」
「最期は本当にやさしそうに子供のような顔だったよ」