無題



しかしもちろん、私は非血人が異種の音楽を創作し始めたことに対して、特に疑問を抱きはしなかった。


私は “彼らがやがて失望することにならなければいいのだが・・・” と思い、
時間が過ぎてやはり、“なぜこんなことになってしまったのか?” という彼らの嘆きの声を聞くことになってしまったのだ。
彼らが再び言うのには、
“どのように引き裂かれるか否かには関係なく、私たちはかなり愛されにくい音楽を生み出してしまった” ということだ。
そしてその不安をあおるかのように、彼らの生み出した音楽のミニマルなシーケンスが止まろうとしている。


その音楽がはたして、
すべての燃えるような恋と切望が(その瞬間を如何に感じるかを知って)自己を保つ本能へと導く為に本当に良いものであったのかどうか・・・
“一部が欠けたテンプレートを通して聴いたあの音楽は、まさしく我らの精神である” という彼らの立場を私は危ういと思うのだった。


その放たれた異種の音楽を聴くたびに私は、
  台所の戸棚に掛けられた彼女のエプロンを想い、
  大樹の陰に隠れる密猟者の少年を想い、
  深く冬眠中のツキノワグマを想い、
  葬送のための石炭運搬用バケツを想った。


“撃たれるように誘われて欲しいのです・・・” とその音楽は語りかける。
そして私はDeleteのキーを静かに沈めたとき、遠い遠い森の大樹の陰で密猟者の少年が崩れ落ちた。