南からの風 (その2)



(その1) http://d.hatena.ne.jp/COLOC/20081029/1225286757 の続き。

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我が家にやってきた2匹の犬について、最初、どちらがサンソンでグードなのかよくわからなかった。


「あなたはサンソンかしら?それともグード?」 と失礼なことを本人(犬?)に聞いたりしていた。
最近はようやく彼らの区別がつくようになってきたのだった。
唯一外観的に違う点は、背中の茶色の斑の模様が少し違うのと、ふたりとも垂れ耳だが、サンソンは時々、耳が立つ。
性格的にはかなり違うようだと気付き始めたのは最近のことである。
二人ともおとなしいが、どちらかというと、やや、やんちゃ気味なのがサンソン。
最初にちょっかいを出すのはいつもサンソンの方である。
グードがおとなしくテレビを見ていてかまってくれないので、サンソンは前をうろうろして画面をさえぎったり、わざとリモコンをふんずけて番組を変えたりとちょっかいを出す。
サンソンとグードは兄弟らしいが、グードは精神的にかなり大人でサンソンのやんちゃも軽くあしらっているようにみえる。


「あなたたちは兄弟らしいけど、どちらが兄で弟なの?」 と聞いてみたところ、意外にもサンソンが兄でグードが弟であった(本人がそういっただけであるが)。
「グードの方が年上の落ち着きがあるじゃない?」 とサンソンに言うと、 「いやいや、落ち着きじゃなくってグードは気が弱いだけですよ」 と言う。
それを聞いて 「とんでもない!」 とグードが怒りの声をあげ、 「気が弱いんじゃなくって、繊細で思慮深いんです」 と訴える。
そうかもしれない。
サンソンはどっちかというとアウトドア派だが、グードはインドア派な感じだ。


それでも二人とも共通してテレビを見るのがとても好きだ。
前に彼らが居た場所にはこんな電気の箱はなかったという。
私がプロ野球中継を見始めると、サンソンがまっさきにやってきてソファーの一等席に座る。
そんな時グードは面白くなさそうにして、仕方なしに器用にページをめくって世界地図を眺めているのだ。
サンソンにはひいきのチームなどないので、どっちのチームが勝っていようとおかまいなしで、ボールが投げられ弾き飛ばされるのをワクワクしながら見ている。
たまにホームランがかっとばされようものなら、尻尾がバターンバタンと盛大に揺れる。
しかし、今シーズンはどうしたものか私のひいきのチームであるウォンバッツの成績がおもわしくない。
ウォンバッツがあまりのぶざまな試合運びの時には、怒った私は躊躇無く途中でブツリと別の番組に切り替える。
そんなときサンソンは 「おいおい、いったいこの世に何が起こったんだ!?」 と私を見る。
わたしは不機嫌そうに何も知らないという顔をする。 
そしてようやく事態を把握したサンソンは大げさに 「あーなんてことだ!」 と頭をかかえ嘆くのであった。
そしてそんなサンソンをみてグードはにんまりと笑みを見せて立ち上がり、器用にリモコンを使い、別のお笑い番組にさっさと切り替えてテレビの前に陣取るのだった。


不思議なことにグードはお笑いの番組が好きなのだ。 
しかし、さらにおかしなことにグードもこの手の番組が好きらしく、さっきまで頭を抱えていたのに、あわててソファーから降りてサンソンの横に座りなおす。
そして、お笑い芸人の決めのギャグに反応して二人で仲良く尻尾を盛大にバッタンバッタン揺らすのであった。
私もお笑いは嫌いではないが、そこまでかじりつくほどでもない。 
お笑いに関しては彼らの方が感性が上なのかしら?と思ったりもする。


一緒にテレビを見ながら、「ごめんね、ごめんね〜っ!」という方言ギャグを私がつられて口に出して言ってみたりすると、サンソンとグードはお互いに顔を見合わせて、 
“さて、どうしたらいいのでしょう?” という困惑の表情を浮かべて、先ほどまで元気だった尻尾の動きがパタリと止まった。


それを見てわたしはふたたびつぶやくのだ「ごめんね、ごめんね〜っ・・・」 と今度は力なく。