ゴンとトナカイ


12月がせまると町がそわそわし始めます。 クリスマスが近いのです。


さて、とある一軒の家の玄関先に光るトナカイの置物が設置されました。
そのトナカイはちょっとねむたい目をしていましたがオシャレな首輪をしていて、立派なそりをひいていました。  そして時間とともに赤い鼻と体のラインとそりの飾りつけが華やかに光り、おまけに首輪の鈴がシャンシャンと鳴るハイテクなトナカイ君でした。


トナカイ君が設置されたその夜、その家の番犬がおっかなびっくりとそのトナカイに挨拶をしました。
「どうもはじめまして。ここん家の番犬してますゴンです。今晩は、今宵は冷えますねえ」
「こちらこそはじめまして、トナカイです。名前は特にないようです。夜は冷えますが、でも冬はやはり寒くないとね」
「それにしてもあなたは色とりどりでと美しいですね」
「いえいえ、私よりももっと美しいものがあります。そうだ、お近づきのしるしにその美しいものを一緒に見に行きましょう。今はまだ早いですから、もっと夜が更けたらお誘いしに行きますから」


真夜中、トナカイがゴンの犬小屋をノックします。
「さあ、起きてください、ちょっとした散歩に出かけましょう。 さあ、私の後ろのそりに乗ってください」 ゴンは眠たい目をこすりながらもそりに乗り込みました。
「さあ、行きますよ!」


シャンシャンという鈴の音とともにトナカイとゴンを乗せたそりはふわりと浮かび、あっという間にゴンのいた家は豆粒ほどの大きさになりました。
「さあ、向こうに広がるのが隣街で、そしてあれが港です」
街の光はきらめく光のじゅうたんのようで、よく見ると赤く光る観覧車や大きな船も見えます。
今まで近所の公園しか知らなかったゴンは、その宝石のような夜景をうっとりと眺めていました。