『 みんな良い子 』


で、今日作った方のお話です。
鋭く世相を斬っています(大嘘)

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『 みんな良い子 』



『悪い子はいねがーっ・・・悪い子はいねがーっ・・・』


朝から相棒であるトナカイの佐藤君が何やらぶつぶつとつぶやいている。
『何してるの?佐藤君』
佐藤君は、ぶっきらぼうに言った。
『んーっと、事業仕分け・・・』
事業仕分け?』
『今年も不景気なんで、予算の都合、厳選された良い子にだけクリスマスのプレゼントを配ることにしました』
『うーん、そうだねえ。今年も予算がきびしいものね。でもうちの担当地区は良い子ばかりでしょう? そんなに厳選しなくても』
すると佐藤くんはツノをフルフルさせながら言うのでした。
『いえいえ、それはわかりませんよ。 私はこの日のために調査員をこの地域に配置しておきましたから』
『調査員?』
『そう、ゴンやミケやキジやチルーやユンやミントやシンパチたちが情報を集めてくれました』
『ご近所の犬猫さんたちだね』
『誰が道にゴミを捨てたか、誰がイジワルしてひげを抜こうとしたか、誰が自転車を無灯火で乗っていたかなど、情報はもうバッチリです』
『そうなんだ』 僕は少し驚いた。
『そうなんです』
『ひょっとして僕も見られてたの?』
『見られてましたね』 と佐藤君は平然として言った。
『で、今、厳選してるわけです。 悪い子はいねがーっ・・・悪い子はいねがーっ・・・』 そういって佐藤君は書類の束とにらめっこしていたのでした。


・・・・・・・・・・・・


しばらくして佐藤君が珈琲とお菓子を持ってあらわれた。 もう三時のお茶の時間でした。
『で、終わったの? 事業仕分けは』
『はいはい、終わりましたよ』
『で、誰か削減するの?』 僕は少しドキドキしながら聞いた。
『・・・残念ながら削減できませんでした』 口調は残念そうだが佐藤君の目は笑っている。
『だよねえ、うちの担当地区は良い子ばかりだから』
『そうそう、残念なくらいに良い子ばかりで』
『悪い大人は結構いたんだけどね』 ちらっと佐藤君は僕を見た。
『それって、僕?』
『はは、大丈夫でしたね』 ニンマリと佐藤君が笑う。
僕はホッとして佐藤君に言った
『じゃあ、みんなにプレゼント用意するために、もう少しバイトしなくっちゃなあ』
『そうだねえ、あのケーキ造りのバイトも飽きちゃたんだけどねえ』
『良い子のために、がまんがまん』
『そうだなあ』
そう言ってから佐藤君はちょっとだけツノをフルフルっとさせて、おいしそうにコーヒーを飲んだのでした。